日本の外食やサービスの成長を支えた年中無休のビジネスモデルが転換期を迎えた。定食屋チェーンの大戸屋ホールディングスは18日、大みそかと元日に休む店を2倍に増やすと表明し、携帯電話販売店なども年末年始に休業日を設ける。人手不足の深刻さが増すなか、売り上げが減っても働きやすい環境をつくり人材を確保する動きが広がっている。

「無理して営業しても採算が悪い。休んで働き方の改善を優先させる」。大戸屋ホールディングスの窪田健一社長は18日こう強調した。大みそかと元日に直営店全約150店のうち、ショッピングセンター内を除く80店程度を休むことを決めた。これは前年同期の2倍にあたる。

「1月3日から、ゆっくり休んだ分を働いて稼げばいい」。こう話すのは、ホテルやブライダル事業を手がけるトランク(東京・港)の野尻佳孝社長。「トランクホテル」(東京・渋谷)を30日から4日間休む決断をした。通常期より宿泊料金を高めに設定でき年末年始が稼ぎ時のホテル業界では異例だ。

新人の離職率が高い携帯電話販売業界も動く。

KDDI(au)は31日から2018年1月3日の間で、1日以上の休業日を設ける方針を、全国約2500店舗(うち商業施設に入居する店舗を除く)に代理店経由で伝えた。NTTドコモも同じ期間に全約2400店の「ドコモショップ」で1日以上の休業日を設ける。近隣の店同士で休みが重ならないように調整する。

全国で10万人が働く携帯ショップの大部分は年中無休に加え、スマートフォン(スマホ)などの商品説明が複雑なため新人の離職率は4割に達する。業界団体の全国携帯電話販売代理店協会は人手不足や離職率の高さを改善するために大手携帯会社と協議し、18年から3社一斉で正月に休業日を設けることになった。

ソフトバンクは18年から、元日を一斉に休みにする。「店同士が競って休みづらくなっていた。キャリアから半強制的に言ってもらうほうが休みやすい」(代理店幹部)という声もある。ソフトバンクは支援金を出すなどして、休業を強く奨励する。

日本の外食やサービス業界は1970年代から営業時間の延長を重ねてきた。いつでも店が開いている安心感が客を呼び、大幅な設備投資をしないでも売り上げを増やす勝利の方程式を築いた。

ただ人手不足が18年以降も続くなか、働き手が減る地方を中心に営業時間の見直しは待ったなしだ。

北海道と関東地方にコンビニ「セイコーマート」を展開するセコマ(札幌市)は18年元日に、全店の半数以上の639店を休む。道内に展開する約1100店中621店、関東に展開する約100店中18店を休業する。17年の元日休業は42店だった。

これまではフランチャイズチェーン(FC)店のオーナーの事情などで休む店はあった。今回は直営店を中心に本部の政策として休業する。従業員の元日の休みを確保するのが狙いだ。

従業員が集まらなければ店は開けない。だが店を休めば売り上げは減る。経営者が解くべき方程式の変数は増え、一段と難しくなる。

「日本経済新聞電子版より抜粋」