フランチャイズといえば飲食店と言われるように、昔からのれん分けという形でチェーン店を増やしてきた飲食業界です。
市場規模も極めて大きく、また次々と新しい業態が増えているため独立開業を志す方は非常に多いです。
しかし、周りのお店を見てもわかるように、新しい飲食店が次々と開業していく一方で廃業する飲食店もたくさんあります。
ここでは、飲食店の独立開業で失敗しないために必ず準備しておくべきことを紹介します。
1. なぜ飲食店を開業したいのか?
飲食店での独立開業を考える際、「こんなお店にしたい」「お客様に喜ばれるメニューを提供したい」「自分の理想のお店にしたい」など、いろいろなアイデアが湧き出てきます。
しかし、フランチャイズでの開業の場合は、メニューや内装の基準などが決まっていることがほとんどのため、オーナーの工夫や理想を加える余地はあまりありません。
加盟金、店舗取得、内外装、厨房機器、家賃、広告、食材など、飲食店を開くにはそれなりに大きな資金が必要となります。
また、準備のために多くの時間を費やすことになります。
なんとなく飲食店で開業してみたいという甘い気持ちで飲食店を始めると、すぐにお店は潰れてしまいます。
飲食店は成功すれば、大きな利益ややりがいを与えてくれる可能性がありますが、リスクも大きい商売であると理解しておく必要があります。
なぜ飲食店を開業したいのか、本当に飲食店で成功できるのかという視点から、もう一度考えてみましょう。
2. 開業資金はどのくらい必要?
開業資金はどのくらいが目安となるのでしょうか。
もちろん店舗の規模や業態によって大きく変動しますので、一概には言えませんが、一例をあげてみます。
加盟金 200万円
物件取得費 300万円
内外装工事費 700万円
厨房設備 200万円
店舗設備 100万円
その他 100万円
合計 1,600万円
居抜き物件の利用や業態によっては500万円~での開業も可能ですが、一般的には1500万円~3000万円が飲食店での開業資金の相場と言えます。
開業資金とは別に運転資金を用意する必要がありますが、6か月分以上を用意すると安心です。
加盟金はフランチャイズ本部に支払うものです。
物件取得費は手数料や保証金のことです。保証金というのは店舗物件の場合、家賃の10ヶ月分が相場で、金額が大きくなります。また「保証金のうち30%が償却」といった条件がついている場合もありますので注意が必要です(この場合、30%は返還されません)。
内外装工事費や厨房設備については、居抜きの物件を選ぶなどして安く抑えることができます。店舗設備などについても、中古のものを購入することもできます。
内外装や厨房・店舗設備について、フランチャイズ本部によって決められていることが多いため確認しながら話を進める必要があります。
≪開業資金の調達方法≫
開業資金の調達には、主に3つの方法があります。
1.自己資金
2.親族や知人から借りる
3.日本政策金融公庫から借り入れ
民間の金融機関からの融資は、担保や保証人を準備しても難しいことが多いです。
そのため多くの方が、公共の金融機関の日本政策金融公庫を利用しています。借り入れを検討している方はぜひ選択肢に入れてみてください。
日本政策金融公庫から借り入れる場合は、開業資金の1/3程度の自己資金を用意すると融資の可能性が上がると言われています。
3. 繁盛店や競合の調査
同じフランチャイズのお店でも繁盛店と不採算店があり、そこには必ず理由が存在します。
理由をフランチャイズ本部に確認しても良いのですが、自分でも繁盛店や不採算店を実際に訪れてリサーチしてみてください。
自分の考え方と本部の考え方がどの程度ずれているかがわかりますし、納得できない場合は加盟しない方が良いです。
リサーチの際には次のような項目に注目すると良いでしょう。
1.店内の雰囲気
2.従業員の接客態度
3.客層・客の質
4.立地
5.広告・宣伝方法
実際のお店に行って自分の目で確かめることは非常に大切です。
4. 店舗物件の調査
独立開業を目指す方にとって、お店は自分の城です。
「開業するからには自分の考えたの場所で」という気持ちが強いと思います。
フランチャイズでの出店の場合、既存店や競合店との兼ね合いもありますが、基本的には希望のエリアに出店できることが多いです。
当然ですが、好立地であるほど、店舗面積が広いほど、1階であるなどで家賃は高くなります。
そのため事業計画と照らし合わせながら、より良い物件をフランチャイズ本部の担当者と一緒に探していきます。
マーケティング調査を実施しているフランチャイズ本部もあるので、しっかりと判断材料にしてください。
出店数の多い、大手フランチャイズ本部にもなると、出店時の売上や利益などの予測値が60~70%の確率で当たると言われています。
30%外れてると思われるかもしれませんが、実はすごい数字(高確率)で、売上予測が70%当たるのであれば、70%の確率で成功すると言っていることと同じです。
もちろんオーナーの経営能力によって大きく左右されることは言うまでもありません。
5. 事業計画の作成
事業計画は開業するうえで必須と言えます。融資を使う場合はもちろんですが、自己資金で開業する場合でも開業後の経営指針となるため作成することをおススメします。
事業計画書には、起業動機や目的、売上予測など様々な項目を記入しますが、中でも重要なのが売上の予測です。
事業計画書はフランチャイズ本部が作成をサポートしてくれることが多いため、一緒に作成すると良いです。
出来るだけ細かく、わかりやすくまとめ、1年後、3年後、5年後などの具体的な予測と展望まで記入しておくとより良い事業計画書になります。
6. 物件契約から内装・外装の施工
「4. 店舗物件の調査」でもあるように、物件の選定はフランチャイズ本部と一緒に行うことがほとんどです。
物件契約は、オーナーが契約することがほとんどですが、場合によっては本部が契約することもあります。
物件契約の際には、手付金や保証金、前家賃を支払うことになります。
また契約前に申込金が必要となる場合もあります。
物件の次は店舗の内外装ですが、ほとんどの場合がフランチャイズ本部により仕様が決まっており、内・外装業者も指定の場合があります。
参考にするために似たような間取りや坪数のお店を本部に紹介してもらい、見学するのも良いかもしれません。
7. 人材採用
求人に関してはフランチャイズ本部よって異なり、本部が人材を確保することもありますが、ほとんどの場合がオーナー自ら有料媒体に求人情報を掲載して募集を行います。
ハローワークなどで無料で募集することもできますが、オープニングメンバーは有料媒体が良いでしょう。
また人材教育に関しては、フランチャイズ本部が研修やマニュアルを用意しているはずなので、それに従います。
8. 各種届け出や資格など
飲食店の開業にあたっては、保健所や消防署をはじめとする各種機関への届け出が必要です。
フランチャイズ本部がサポートしてくれることがほとんどなので、担当と良く打ち合わせをして漏れの無いように届け出をしましょう。
≪保健所≫
飲食店の営業許可を取得するためには、保健所に届け出をしなければなりません。
まずは管轄の保健所に、お店の図面や提供メニューなどの資料を持って相談に行ってください。
開業の前には保健所によって検査が行われますが、事前に相談に行っておくとスムーズに進みます。
≪消防署≫
防火管理者選任届や防火対象設備使用開始届などいくつかの届け出が必要です。
保健所と同じように、予め相談に行っておくとスムーズに進みます。
飲食店の開業に調理師免許は不要
飲食店開業において調理師免許は必須ではありません。
必要な資格としては食品衛生責任者と防火管理者です(防火管理者は30人以上を収容する場合のみ)。
いずれも各都道府県で開催される講習を受ければ取得できます。
居抜き物件は注意が必要
注意したいのは居抜き物件の場合で、営業内容や収容人数など、お店の状態によって規定や基準が変わるため、「前のお店が営業していたからうちも大丈夫だろう」と決めつけてはいけません。必ず確認しましょう。
9. 販促ツール
看板の設置については、物件選定の段階から大家さんに設置場所や規定などを確認しましょう。
看板にはどうしてもお金がかかってしまうので、その他の販促ツールはなるべくお金がかからない方法を探したいです。
チラシやSNS、ご近所への挨拶など、お金をかけない販促方法はいくらでもあります。
コツコツお店の情報を発信して、受け手に「お店のファンになってもらう」ことを目指していきましょう。
10. 最後に
開業まではいろいろとやるべきことが山積みで、大変なことも多いですが、この苦労は独立開業した者だけの醍醐味といえます。
飲食店経営成功のために、それぞれの過程を楽しみながら頑張っていきましょう。