低金利が長期化し、地政学リスクなども高まる中、安全資産として実物投資に注目が集まっている。投資先は定番の金だけでなく、多様化している。貴金属や不動産を超えて広がる実物投資の今を報告する。

株式などの金融商品と違い、実物が手元に残るために比較的安全だと言われる実物投資。なかには高利回りが期待できるモノもあり、にわかに人気が高まっている。その代表がワインだ。

10月14日、東京・銀座にあるシンワアートオークション(2437)で開かれたワインオークションには100人以上がつめかけた。会場の熱気が最高潮に達したのは、フランスの最高級ワイン「ロマネコンティ」の入札だ。次々と札が出され、みるみるうちに値段が上がる。一番高い値を付けた1990年のロマネコンティは1本210万円だった。

同社の石井一輝取締役は「思ったように落札できず、みんな鬼気迫っていた」と話す。この日の落札総額は9101万円と予想総額の下限の約2倍。国内最大規模のシンワアートは2001年からワインオークションを開くが「今年は間違いなく最高値」(石井氏)という。

■たる詰め時点で買う楽しみも

有名な海外のワインを、熟成される前のたる詰めの時点で買い付ける「アン・プリムール」と呼ばれる先物取引も日本でも活発になっている。けん引役は08年に日本に進出した英国のワイン販売大手、ベリー・ブラザーズ&ラッド社だ。月額250ポンド(約3万7000円)以上を積み立てて投資し、スポットでの購入も可能だ。

購入したワインはベリー社の英国の倉庫で年12ポンド(約1800円、12本単位)で保管する。「市場に出回るまで価値が上がらないので、最低5~10年は保有をお勧めする」(同社日本法人の酒井亜希子セールス・エグゼクティブ)というが、基本的には同社のサイトで自由に売買できる。国内に送り、自分で楽しむこともできる。

ベリー社が抱える日本の顧客は個人だけで1000人を超え、この2年ほどで倍増した。16年のポンド安やワインの価格の上昇で人気が高まった。英ロンドン国際ワイン取引所が代表的な100銘柄の価格をもとに算出する指数「Liv-ex100」は15年末から今年9月末までに約3割上昇している。

06年からプリムールを始め、1000本のワインを所有する40代の男性は「自分が飲むために始めたが、値上がりすれば一部は売りたい。目を付けたワインが大化けするかも、という楽しさがある」と話す。酒井氏によると、「シャトー・ランシュ・バージュ」のように最上級ではなくてもクオリティーが高いワインなら6本、4500ポンド(約67万円)くらいから投資できる。

ウイスキーの人気も高まっている。15年創業の英ウイスキー・インベスト・ダイレクトは熟成中の原酒への投資仲介を始めた。同社によると、日本からの投資では価格やインフレ率の推移から算定した実績の平均利回りが約8%。将来、投資額に相当する数量分を引き取って飲むことも可能だ。

14年には香港で希少ウイスキーに投資するファンドが立ち上がった。日本製品の国際的評価も上がり、30年以上熟成したサントリーの「山崎」などでは、買い取り価格で100万円を超えることもある。スコッチウイスキーの価格推移を表す指数「レア・ウイスキー・エイペックス・1000・インデックス」は08年末から約6倍に上昇。日本のウイスキーの同様の指数も14年末から約2倍になっている。

■スポーツカー 上昇ぶっちぎり

盛り上がる実物投資はほかにもある。その1つが自動車。今年、日本の納屋でほこりだらけで見つかったのは、フェラーリの「365GTB/4」シリーズのうち世界に1台しかない公道走行用のアルミニウム製だった。サザビーズのオークションで180万ユーロ(約2億4000万円)で落札された。

特に1920~60年代のクラシックカーの人気が高い。英ビンテージカー雑誌オクタンの日本版編集長、堀江史朗氏によると「十数年前からスポーツカーが値上がりし、今ではアストン・マーチンなどにも人気が広がった。より希少性が高く、メンテナンスがよい車が選別される傾向にある」と話す。

英ナイト・フランクが算出するラグジュアリー資産ごとの指数によると、1年前と比較して最も上昇したのはワインで24%。アートは指数が14%下落しているが、長期でみると様相が異なる。10年前比では自動車の457%という上昇率が突出するが、アートや時計なども総じて上昇しており、長期保有で資産効果が高まる様子がわかる。

■多肉植物、戸棚の洋酒…「ヤオフク!」で資産に変身

ワインやウイスキーのような比較的高額の実物投資には手が届かなくても、趣味の延長でちょっとした小遣い稼ぎもできる。そうした個人が実物資産の売買に利用しているのが「ヤフオク!」などのオンラインのオークションサイトだ。

主婦の長沢恵美さん(28)が今年からヤフオク!に出品し始めたのは、自宅で育てた多肉植物。葉に水分を多く含む多肉植物は、そのぷっくりしたかわいらしい見た目がうけて、ここ数年で人気が高まっている。珍しい種類ならヤフオク!で1株10万円の値を付けている例もある。

長沢さんは自営業の父親と多肉植物の栽培にはまり、自宅に自分でビニールハウスを建てた。もともとは観賞用だったが、1株1000円~1万4000円程度でこれまで約100人に販売し、20万円程度を手にしている。

自分で増やしているので苗代はタダだが、鉢や土などの費用はかかる。日当たりの加減で葉が焦げてしまうこともあり、意外に難しい。それでも長沢さんは「ちょっとしたお小遣い程度だが、同じ趣味の人とつながり、楽しい」と話す。

自宅に眠った「遊休資産」が高値を付けることもありそうだ。ヤフオク!で過去1年の間に単価が1万円以上上がったモノを見ると、コニャック、日本画などが並ぶ。ユーロ導入前の各国の通貨など、希少性が高まったモノも意外な人気を呼んでいるという。

■定番の貴金属投資も進化 希少コイン市場拡大 金の仏具も人気

定番の実物投資、貴金属にも新たな潮流が押し寄せている。注目が集まっているのが、主に欧州で発行された古い金貨や銀貨のアンティークコインだ。販売・鑑定業者、ユニバーサルコインズ(東京・中央)の西村直樹代表取締役は「この数年で国内市場が4~5倍になった」と話す。

アンティークコインの収集は欧米では長い間、富裕層に人気の趣味となってきた。「金融財閥のロスチャイルド家もアンティークコインのカタログを作成していた」(販売・鑑定業者、日本コインオークション代表取締役の大谷雄司氏)という。日本国内の収集家は10万人程度で市場規模はおよそ200億円、世界全体では1兆円程度に達しているとみられる。

インターネットで気軽に世界中の人と取引できるようになったこともあり、収集家は増加傾向だ。愛好家だけでなく、運用目的の投資家も市場に流入している。

発行枚数が数百枚以下と少ないものは、発行から時間がたつにつれて希少性が増していくため、価格が上昇しやすい。大谷氏によると、英ビクトリア女王即位記念として1839年につくられた金貨「ウナとライオン」は、10年前には400万円程度が相場だったが現在は4000万円以上に値上がりした。

アンティークコインは専門業者の店舗やウェブサイトで購入できる。コインについてある程度知識を持つ人なら、国内でも年数回開かれるオークションに参加して自らの目で見極めたコインを買うのも手だ。

インターネットを通じた取引は現物を目にできない分、コインの品質などには、よく注意する必要がある。高価なものでも傷つくと価値が落ちるため、保管は貸金庫や業者を活用するのが安心だ。

取引にあたってはコインの希少性や人気を見極める必要もある。発行された時代背景なども人気に影響するため、世界の歴史を勉強すると役立つ。投資として利益を狙うなら値上がりしやすい希少価値が高いものを購入する必要があり、「最低でも1000万円の資金はほしい」(西村氏)。

都内の70代の男性は2012年からアンティークコインへの投資を始め、現在は年数回開かれるオークションにも参加する。「勉強した成果が出やすく年2割もうかることもある。のめり込んでいる」と目を輝かせる。

一方、ちょっと変わった貴金属投資の一つとして、金の仏具の人気も高まっている。田中貴金属ジュエリーでは、仏鈴(おりん)の売り上げ数量が10年で5割増えた。「子孫が代々引き継いでいける資産として人気がある」(同社の橋本順子ヘッドマネージャー)。マーケットアナリストの豊島逸夫氏によると、著名投資家のジム・ロジャーズ氏も来日時に金の仏具を購入し娘への資産譲渡に備えているという。

購入者は50代以上が中心だ。価格は金相場の変動の影響を受けるが、田中貴金属ジュエリーでは仏鈴の参考価格がおよそ100万~400万円、仏像は700万円程度するものもあり、なかなか高価だ。工賃が加わった分、同量の金地金の2倍程度の価格となっている。仏壇において日常的に使う人がいる一方で、傷付くことを恐れてしまいっぱなしとなることも多いようだ。

売却は金地金の買い取り店でできる。ただ、地金として評価され工賃は考慮されないため、買い取り価格は購入時よりも下がる可能性がある。金価格の変動を考慮しつつ、売却にメリットがあるか、十分に考慮しておこう。

■「実物」こんなリスクに注意 需給・保存状態… 価格や利回り低下に直結

「ちゃんと投資してくれていたら、もっともうかっていたはずなのに…」。千葉県在住の30代の男性は最近のワイン価格の上昇について尋ねられると、こう答え、ため息をついた。

男性が投資していたのは、ヴァンネットが運用するワイン投資ファンド。日本初のワインファンドとして一時期脚光を浴びたが、同社は2016年に経営破綻した。当時の負債総額は約40億円で、ワインの在庫状況や取引内容について、虚偽の報告をしていたことが破綻後に明らかになっている。

この男性は「珍しいものに投資してみたい」と考え、05年からヴァンネットのファンドに1口、300万円を投資。12年からもう1口投資した。「欧州のサイトで見られるワインの値動きと報告書の内容に食い違いがないかなどはチェックしていた」と言うが、虚偽報告については見抜くことができなかった。破綻前に異変に気づいて解約したため、損を被ることはなかったが「換金性が低いワインの投資はもうやるつもりはない」と話す。

実物の価値があるため、安全な投資と考えられがちだが、実物投資には少なからずリスクもある。ヴァンネットの例からもわかるように、実物投資は株式のような市場がない上、仲介業者も少ないため、情報収集が難しい。

実物の裏付けがあるとはいっても、利益が保証されるわけではない。

例えば、都心を中心に需要が拡大し、高い利回りが見込めるとして、ここ数年、人気を集めていたコインランドリー投資。フランチャイズチェーン(FC)の契約をして初期投資さえしてしまえば、運営にはそれほど手間もかからない。サラリーマンでもできる新たな不動産投資として広がった。

だが、事前の集客やコストの算出の見立てが甘く、借り入れの負担が重くのしかかっている投資家も多いという。コインランドリーをFC方式で展開し、16年11月に東証マザーズと福証Qボードに上場したWASHハウスは出店が予定を下回り、17年1~6月期の売上高、営業利益ともに期初予想を大幅に下回った。

実物投資も金融商品と同様に、需給によって価格や利回りが大幅に下がる可能性がある点には注意が必要だ。

最後のリスクは、現物投資では売却する際の価格が保存の状態に大きく左右されるという点だ。

シンワアートオークションの場合、出品されるワインについてはどんな倉庫でどのような状態で保管されていたかを事前に厳しくチェックするという。温度管理が不十分で、液漏れなどがあった場合はオークションには出品できない。

実際に出品しているコレクターは専用の蔵を持っているか、温度管理がしっかりした倉庫をレンタルしている人が多く、個人で保管する場合は、費用がかかる点にも注意が必要だろう。

「日経ヴェリタス、日本経済新聞電子版より抜粋」

フランチャイズから少し離れたニュースをご紹介しましたが、様々なビジネスが存在し、現物投資をメインとしたFCも多く存在しています。

良くイメージされる、飲食・物販やサービスを提供するフランチャイズビジネスとは異なり、現物を購入しそれ自体が稼働することでお金を生み出します。

投資の意味合いが強くなりますが、ある程度資金があり、事業に対して手間をかけたくない方や副業として収入を得たい方に人気となっています。

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今後も外国人旅行者が増えることが予想される中、外貨両替機には大きな需要が見込めます。
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今後考えられる需要を予測して投資することが成功への一歩と言えるでしょう。