コンビニエンスストアが客数の長期停滞というかつてない転機を迎えている。出店拡大で市場の飽和感が強まるなか、ライバルとして急浮上したドラッグ店などに客を奪われているためだ。ファミリーマートが24日、コインランドリー参入を発表するなど各社は集客のてこ入れに動き始めた。試練を乗り越えられるのか。

ファミマは2019年度末までに500店にコインランドリーを併設する計画。手軽に衣服や布団を洗濯できる点を訴えて客を集め、待ち時間に店内の「イートイン」スペースの利用につなげるという。「狙いは店舗の集客力を上げることに尽きる」。ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)で経営戦略の立案を担う田村剛氏はこう強調した。

21日にはセブン―イレブン・ジャパンがソフトバンクなどとシェア自転車の拠点拡大を発表。これも狙いは来店のきっかけづくりだ。ローソンを含め大手3社とも業績は好調だが、店ごとにみていくと、コンビニの集客力には陰りが目立ってきている。

日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの既存店の来店客数は10月まで20カ月連続で前年割れが続く。特に10月は2度の台風上陸などで5%近い減少だった。コーヒーなどのついで買い需要の開拓で1人当たりの購入金額は上昇を続けているものの、客数減はそれを打ち消すペースで進行。既存店の売上高は5カ月連続で前年を下回り、10月にはセブンの国内既存店の連続増収も62カ月で止まった。

店舗数が増え全店の売上高は10月も微増を維持した。だがコンビニは加盟店が独立して経営を担うフランチャイズ方式のビジネス。各店の伸び悩みが続けば、事業モデルの根幹を揺るがしかねない。ユニー・ファミマHDの高柳浩二社長は「むやみに店舗数を追い求める時代ではなくなった」と話す。

コンビニ市場を侵食しているとみられているのがドラッグ店だ。商品を主力の薬からコンビニが得意とする日用雑貨、総菜などに拡大。ウエルシアホールディングスが今後3年で24時間営業の店を4倍の400店にする方針を打ち出すなど、コンビニを意識した動きが広がる。急拡大するネット勢もいずれコンビニを脅かす存在になる可能性がある。

セブンなど大手3社が今年相次いで日用品を値下げしたのも、ドラッグ店などに比べ割高感のある価格を放置できないと考えたためだ。さらに最近は人手不足や人件費上昇が各店の経営環境を厳しくしている。コンビニを象徴する24時間営業が必要なのかといった議論も浮上。ファミマは24時間営業の見直しの可否を検証する実験を数店舗で始めた。

四十数年にわたるコンビニの成長を支えたのは利便性の追求と絶え間ない店の機能の進化だ。公共料金の収納代行やATM設置など、コンビニは新たな機能を加えるたびに周辺の市場を侵食しながら利用者を広げた。2年近く続く客数の停滞を打破する便利さとは何か。コンビニの進化の力が試される。

「日本経済新聞電子版より抜粋」