元気寿司の法師人尚史社長は日本経済新聞の取材に応じ、回転ずし最大手のあきんどスシローとの経営統合による養殖魚介類の調達拡大に意欲を見せた。
大量かつ安定的な買い手として養殖業者の規模拡大を後押しし、低価格での調達を実現する戦略だ。
小規模事業者が多く割高な現状に一石を投じ、コストを抑えた食材の確保を目指す。
現在、元気寿司のすしネタはほとんどが天然の魚介類だという。
養殖魚介類は比較的衛生管理が容易な上、計画的に生産でき仕入れの効率化も見込める。
ただ、法師人社長は「国内の事業者は経営規模が小さいため販売単価の高いモデルを採りがちで、大量生産、大量出荷というモデルが広まっていない」と課題を指摘。
その理由として、国内では安定的に出荷できる大口取引先がいないことを挙げた。
売上高2000億円に迫る回転ずし連合の誕生で「国内の養殖業者で大規模な投資が進む可能性がある」(法師人社長)と期待する。
養殖魚介類を安定的に仕入れられるようになれば経営効率が改善し、さらに大量の仕入れによりコストも削減できる。
「現在はほとんどが天然魚介類だが、将来的には多くを養殖にしたい」(同)という方針だ。
海外での養殖魚介類の調達力強化も期待する。
現在の元気寿司の規模では海外での調達力が弱いが「2000億円規模で話を持って行ったときに、海外事業者がどんな動きをするかは未知」(同)と、現在の約5倍となる規模での購買力を生かす考えだ。
コメについては従来から両社が持っている仕入れルートを維持する方針で、天然魚介類ではお互いの仕入れ先の統合は難しいとみている。
調味料やデザート、サイドメニューなどの加工食品では共同調達で「相当のメリットが期待できる」(同)とする。
加速が期待される統合後の海外展開については「パートナーがいない所に出店するのは止めない」とする一方で、「フランチャイズチェーン(FC)の契約先がいるところに出ていくのは契約上大問題」と話す。
スシローが望めばFC展開のノウハウを提供する考えだが、競合を防ぐため、元気寿司の契約先と同じ商圏への出店は自粛を求める方針だ。
【元気寿司社長「スシロー、発想力柔軟」】
法師人尚史社長との主なやりとりは次の通り。
――2013年に表明したかっぱ寿司との統合は頓挫しました。スシローとはうまくいきますか。
「これまでは競争相手として見てきたが、似ている部分があると感じている。おいしさと経営効率のバランスの中で、追求する味のレベルは企業ごとに違う。メニューや商品を見ると、店内調理に注力して味に重点を置いていると感じる。元気寿司も味を追求する姿勢が強い」
――スシローの良いところは。
「商品開発と発想が素晴らしいと思う。手巻きずしを小さくして提供するなど、柔軟な発想力を持っている。テレビCMはとにかく、すしが食べたくなるようにつくっている。スシローのCMが流れると、元気寿司の売り上げが伸びることもあった」
――統合で期待することは何ですか。
「元気寿司は、商品開発部長は営業部長という考えで現場重視でやってきた。スシローに開発の専門家がいるのであればうまくミックスしてやっていきたい。一度スシローの開発部門をよく見てみたい」
「日本経済新聞 電子版より抜粋」