暑さに耐えかねてエアコンをつけるとなんだか空気が「カビ臭い」――。
ハウスクリーニング各社には今年、エアコンを分解し内部を清掃する「エアコンクリーニング」への申し込みが殺到した。
注文数の急増でスタッフが足りない企業も出た。
今夏の猛暑予想が一因だったが、人気の理由はそれだけではない。
エアコン内部に発生するカビの危険性への認識が高まり、消費者の健康志向をがっちりとつかまえたのが大きい。最前線を追った。

■キッチンなどと比べプロに頼みやすい

エアコンクリーニングは毎年、5~6月に需要のピークを迎える。夏場の本格稼働を前にエアコンを分解して内部まで徹底的に清掃したい消費者からのニーズが多く、室外機や配管まで掃除する専門性の高さが特徴だ。
また、エアコンの分解は個人には難しく、浴室やキッチンのクリーニングと比較してもプロに頼みやすいという点が利用を後押ししている。

ハウスクリーニングサービス「おそうじ本舗」を展開する長谷川興産(東京・豊島)では今でも「エアコンクリーニングへの注文が殺到しすぎて人手が足りない」という。
全国にフランチャイズ(FC)を含め約1400店舗を展開しているにもかかわらず、利用者に順番待ちをしてもらっている状態だ。

東京都新宿区に住む会社員は、3年前に初めて長谷川興産のエアコンクリーニングサービスを利用した。
「購入して2年目のエアコンから大量の真っ黒な水が流れ出ている光景を見て、そのほかに所有する3台のエアコンもすぐに清掃してもらった」。
それ以降は家庭に高齢の同居者もいるため、健康の観点からも毎年必ずエアコンクリーニングを頼んでいるという。

エアコンの内部は多湿かつほこりがたまりやすい環境のため、カビの発生にちょうどいい条件が整っている。
そのため分解して内部を徹底清掃しても、約半年後にはカビが発生してしまうことは避けられない。
営業企画部の尾崎真氏によると、掃除をすべきタイミングは「エアコンの風が少しでもカビ臭いと感じたとき」だという。

同社では1~2年に1度の分解クリーニングを推奨している。
現在、同社サービス利用者のほとんどがリピーターとなっているという。
尾崎氏は「大量の黒い汚水を見たら、心理的に掃除せずにはいられなくなる」とリピート率の高さを分析する。

「日本経済新聞 電子版より抜粋」