中国・上海で店舗の開発や運営サポートを手がけるコメダホールディングス(HD)の遠藤浩介事業開発部部長の関心は中国だけにとどまらない。
視線を向けているのは台湾だ。
駐在している上海から最近、足しげく台湾に出張している。

同社は日本でも海外でもコメダ珈琲店がつくる店内の雰囲気への支持が来店動機の多くを占めるとみる。
今年に入って臼井興胤社長も台湾を何度も訪れ、出店場所の絞り込みを進めている。

「適度に発展し、人がビジネスに忙しい点がコメダの店舗コンセプトにマッチする」。
臼井社長は客がくつろげるコメダ珈琲店は台湾でもニーズが大きいとみている。
機関投資家ら市場関係者を前に今春、臼井社長は「今期(2018年2月期)中に台湾に1店は出したい」と宣言した。

直営は考えず
実際に海外で店を増やせるかどうかはフランチャイズチェーン(FC)に参加するオーナーが鍵を握る。
コメダが日本国内で急速に出店を拡大できた要因の1つは地元でビジネスを手がけるFCオーナーの協力だ。
「直営店は一切考えていない」臼井社長はこう言い切る。

コメダは国内でもFC店の比率が約98%と高い。
「自分の店を守るという意識が強いFCオーナーの自助努力こそがコメダの成長の源泉」(臼井社長)との信念がある。

名古屋発祥のコメダは他地域での土地勘が乏しかった。
FCオーナーとなることを希望する地場企業が持つ情報をフル活用し、出店場所を選んできた。
海外でも現地資本との協力関係を最重要視する。
中国でも「コメダ珈琲店を手掛けたいという地元企業はとても多い」(遠藤部長)という。

上海で7月下旬に開店した2号店のオープニングセレモニー。
式典後に開いた関係者向け試食会は人であふれかえった。

くつろげる雰囲気が受け上海の1、2号店は順調な滑り出しだ。
2号店の金虹橋店をFCとして運営する女性経営者、高艶氏は「コメダを中国で500店出したい」と意気盛んだ。
中国で成功者が生まれればFCへの参加を望むオーナーが次々に現れることになる。

株価の上値重く
海外市場開拓という成長戦略を実現できれば、上値が重いコメダHD株にとって強材料になる。
同社の足元の株価は1900円台前半で推移している。
16年6月の株式上場時の売り出し価格(1960円)を下回る。

FC店へのコーヒーやパンの卸売りを中心とする高効率経営だけに自己資本利益率(ROE)は約20%と高い。
ただ将来の成長性への市場の期待を示すPER(株価収益率)は17倍強だ。
MBKパートナーズ系のファンドは15日までに持ち株全てを売却し、需給面での悪材料が一部なくなったものの、PERは同業のドトール・日レスホールディングスに若干見劣りする。

「国内で1000店体制を築いた後は出店余地が狭くなるため、その後の成長戦略の実現性を示すことが重要だ」。
東海東京調査センターの清田涼輔アナリストはこう分析する。

名古屋から全国に店を広げたコメダHD。
株価の「天井」を突き破るには国内のような飛躍を海外でも示す必要がある。

「日本経済新聞 電子版より抜粋」