弁当などを届ける配食サービスを高齢者向けに手掛けるシルバーライフが25日、東証マザーズ市場に上場した。
初値は4630円と公開価格(2500円)を85%上回った。終値は4370円。
新規株式公開(IPO)では競合の後を追う形だが、全国を網羅する560店超のフランチャイズチェーン(FC)を武器に、今後も最大で年80店のペースで店舗網を拡大する。
記者会見した清水貴久社長は現在の約560店体制を「10~15年後に1500店にしたい」と述べた。

■毎日食べても飽きない日常食を

清水貴久社長(43)は会見で「介護ヘルパーは今後さらに不足する。現場の穴を埋める存在としてわれわれの役割は拡大する」と強調した。

シルバーライフは「毎日の食事を高齢者の玄関先まで1軒ずつ届ける」(清水社長)を売り文句に調理済みの食材をFC店に販売。
主に75歳以上の高齢者向けに弁当などを届ける。
利用者は1食から送料無料で注文でき、前日までキャンセルできるのが特徴だ。
人手不足で宅配業界が疲弊するなか、シルバーライフの配送網はオーナー自らが配達。
清水社長は「各店舗の配送範囲が狭いため、(人手不足は)今後も大きな問題にはならない」と指摘する。

強みはサービスの手軽さにとどまらない。
配食に特化した自社工場は1000品目以上の多品種生産を可能にし、「毎日食べても飽きない日常食を提供している」(清水社長)。
人手不足で手作り調理が厳しくなっている老人ホームに販売するほか、他業者にも冷凍弁当を卸売りしている。
おかずの大きさは「通常」「一口大」「極小」など個別対応している。

競合では食事療法に応じた冷凍弁当を宅配するファンデリーが15年6月に東証マザーズに上場するなど先行するが、シルバーライフはFC店との強い店舗網と配食に特化した工場を持っており、販売価格を抑えている。
17年7月期の単独売上高は前の期比26%増の52億円と、ファンデリーの32億円(17年3月期)を上回る。

介護ヘルパーが不足する現場では、自宅で食事を作ってもらえる日数がさらに減る見込みだ。
介護保険に頼る生活も難しくなるなか、清水社長は配食サービスの需要拡大を見込む。
矢野経済研究所によると、個人向けの高齢者配食サービス市場は20年に16年比24%増の1470億円に拡大する見通し。
シルバーライフは5~10年後には売上高100億円を目指す。

■全国トップのオーナー店長から社長へ

清水社長は警視庁を経て、経営コンサルティング会社でFC営業を担当した。
その後、当時できて間もなかった配食サービスに注目し、02年に自ら会社を設立してFC店を運営。自らバイクで配達に出向いた。
運営店舗は当時の全300店舗のトップとなった。
「オーナー店長として営業先を全てリストアップし、毎月必ず訪問した。当たり前の営業活動を行っただけ」と話す。

ただ、「食材の作り込みは外食に劣り、営業の仕組みもできていなかった」と次第に本社への不満が募った。
「本部の言うことを聞くだけはいやです」。
清水社長の店で働いていたアルバイトが飛び出し、07年にシルバーライフを創業。
09年、清水社長もFC開発部長として入社し、店舗網を着々と拡大した。
12年に社長に就任した。

13年に自社工場を取得したものの、当初は運営ノウハウがなく苦労した。
「工場に4カ月泊まり込んで生産体制をゼロから見直した」(清水社長)。
上場で調達する10億円超の資金はほぼ全てを設備投資に充て生産効率を引き上げる。
新工場は2年後をめどに稼働させる計画で、生産能力は1日当たり最大5万食を生産できる既存工場の4倍となる見通しだ。

25日時点のシルバーライフの時価総額は109億円で、ファンデリー(95億円)を上回った。
18年7月期の売上高は前期比17%増の61億円を見込む。
清水社長は「高齢者向け配食は今後10~15年で店舗数が現在の2~3倍まで伸びる」と予測する。
「毎日食べる日常食は外食と違い商品力の差別化はほぼ通用しない。実績が出ている事業モデルをつらぬく」と意気込む。

「日本経済新聞 電子版より抜粋」